シーズン2に突入。

投稿日時 : 2019/12/12 18:00

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左:「年金:疑似餌ばかりで、政権は完全孤立」右:「左派にとって、フィリップ首相の演説は動員継続への呼びかけ」「組合の連携は、力関係を強め、拡げてゆく」

年金制度改革の全容が昨日の昼、フィリップ首相によって発表された。その後、夜のニュース番組でもスタジオでのインタビューに応じ国民へ説明した。ここでその細かな点については書かないが、結果、組合側はまったく納得せず。ストライキもデモも継続。次の大きなデモは17日。それまで、あるいはそれ以降もしばらくこの状態は続くとされている。

元々組合側は、改革案自体の破棄を要求していて、政府側も原則(ポイント制に移行し、の普遍的年金制度“Retraite Universelle”)は譲らないと、まさに「Bras de fer」(直訳だと腕相撲、力比べ)。昨日、首相は盛んに「闘いの比喩は使いたくない」、「組合などのいいたいことは理解している」などとくりかえしたが、組合側はまったく聞く耳をもたず。改革はあまりにも多くの要点があり、すべてが議論の対象に。

さらに、今朝、各メディアが大きくとりあげているのが、これまでは静観していた労働組合CFDTが、自分たちもストライキ・デモに参加を表明したこと。労働組合といっても、それぞれの職種で別々だったり、系統が違うものもあり、労働組合(さらに学生組合もある)はいくつもある。今回加わった組合CFDTは、首相の発表で、年金の「基準年齢」(âge pivot)を64歳としたことに猛反発し、ストライキ・デモに加わるという。

日本ではいつの間にか定年が65歳になり、近年は70歳まで働ける(働かす)ように法整備の動きがあったりするが、フランスでは、どこかの報道番組が歴史学者を引用していっていたように、「改革(réforme:レフォルム)は、革命(révolution:レボリューション)なしにはありえない」という。

そして、先日も日本の出生数の記録的減少のニュースがあり、高齢化問題とともに、少子化対策・育児支援が深刻な問題になっている日本からみると、今回のフィリップ首相の年金制度改革法案の中で目に付いたものがあった。そしてこの点については、組合側もニュース解説などでも批判はされていない。

それは、子どもを産んだ女性に対する支援で、出産した子ども一人につき5%の年金支給額をアップし、3人目からはさらに2%(つまり3人目は7%)の増額になるという。このプラス分は夫婦で分けても良いし、母親だけが受け取っても良いという。もちろん、この母親支援についても、批判するポイントを探せばでてくる(そもそも批判されないことなどはほとんどない)が、こうした女性支援を年金制度改革の一つのポイントとして持ってくるのがフランスだ。年金の話だが、これから母親になる人たちへのメッセージでもあり、これもまた「少子化対策」なのかもしれない。(が、フランス的なシニカルな見方をすれば、これは女性へのアピールをすることで政府への反対を和らげるという政治的な意図もあるとも見える。)

もちろん今朝の新聞はすべてがこの話題。昨晩も生討論が多くあった。これがまだ一週間続く。17日の大規模ストまでどう情勢が変わるのか。もう楽しいクリスマスは微妙になってきたし、年内に解決するかもまったく糸口がみえない。街ではストライキが続き、メディアでは討論・解説が溢れ、それでも冬は進む。