経済問題であり、環境問題であり、選挙戦の重要なポイント。

投稿日時 : 2021/11/12 17:30

「光熱費の困窮:フランス国民1200万人が家で寒がっている」
地方紙La Dépêche du Midiのウェブサイトより。

日本では相変わらず、ローカルな規模でも影響がある世界規模の問題でも、フランスをはじめとする欧米のようには報じられていない。

しかし、フランスではこの秋からメディアはもちろん、政治家やアソシエーションなども声を上げている問題の一つがエネルギー問題だ。世界的な原油の高騰、電気やガス料金の値上げ、ガソリンの値上げはどこの国でもほぼ同じだが、フランスでは「Précarité énergétique(プレカリテ・エネルジェティック):エネルギー(ガスや電気の光熱費)の不安定・困窮」という言葉がよく聞かれる。平たく言えば、光熱費貧乏だろうか。

これは光熱費の値上げ、そしてコロナ禍による経済的な状況の悪化で、光熱費の支払いが難しくなっている家庭が多くなっていることを示している。フランス国民のじつに79%が光熱費の支払いの割合が大きいと感じており、2019年には、70万近くの世帯が支払いができなかったことがあり、中でも18-34歳の割合が大きいという。

こうした状況を受けて政府も対応している。すでにガス料金の値上げを止めさせ、電気料金も値上げ率を固定、さらには、貧困家庭には「エネルギー小切手(chèque énergie)」の配布を決めている。マクロン大統領が発表した小型原子炉の建築も、安定した国内エネルギーを確保するという方針であり、なおかつカーボンニュートラルを目指す環境政策でもある。

さらに、光熱費自体の値上げ以外に、アソシエーションなどが問題にするのが、「passoire thermique:熱効率のざる」といわれる、熱効率が悪いアパートや一軒家に住むケースだ。ある試算によると、500万近くの世帯があるという。これについても、アソシエーションなどは、熱効率がよい家にリフォームするための公的補助などが必要だと訴えている。