フランスの大統領は、プライムタイムに30分以上のテレビで生演説をする

投稿日時 : 2021/11/10 17:30

「エマニュエル・マクロンの演説:大統領は選挙キャンペーンというより、振り返りのキャンペーン」
Le Parisien紙のウェブサイトより。

日本の首相や政治家は、「ぶら下がり」という数十秒の発言か、原稿ありきの数分の発表しかしないが、フランスの大統領は定期的にプライムタイムにテレビの生放送(時には録画)で30分以上の演説をする。

文化や文明の違いといえばそれまでだが、なにも大統領や政治家だけではなく、メディアでも、大学でも、さらには小学校でもこうした「演説」のような口頭発表は、フランス人の教育、文化にある。

コロナ禍になってからは、いつもよりも頻繁にテレビを通じて国民に「報告と連絡」をしている大統領。新たな感染の波(フランスでは第五波)がきている状況、そして来年春に大統領選挙を迎えるタイミングで、様々なテーマが取り上げられた。

主なポイント:
・12月15日から、65歳以上の国民は三度目のワクチン接種をしていないと衛生パスの有効期限が更新されない。
(この発表を受けて、1時間で10万のオンライン予約があったという。これはもちろん、ワクチン接種率を上げるためだ。)

・重症者の8割以上が50歳以上という状況で、50-64歳に向けて、ワクチン接種を促すキャンペーンを始める。

・ワクチン接種をしていない・拒否している国民に対して、「責任感」に訴えかけた。

・マクロン大統領の公約でもあった年金制度改革は、感染状況が改善していないことを理由にしばらくはとりかからないとした。
(先に大統領は、改革の条件として、感染状況の改善と、経済状況の改善をあげており、経済状況は改善してきたものの、感染状況を理由に、優先順位を下げたことになる。もちろん、組合などからの反対の動きなどもふまえてだ。)

・先日から言及していた小型原子炉の建築も、「フランス独自のエネルギー確保」と「2050年のカーボンニュートラル」のために進める。

もちろん、野党やメディアからは批判的な意見も出ている。具体的な発表がほとんどなく、これまで自分がやって来たことを振り返っただけとか、当然、来年春の大統領選挙を控え、未だに公式に出馬表明はしていないが、大統領という立場を使って、選挙活動をしているなど。

また、大統領の演説とは直接の関係はないが、今週から多くの小学校でマスクの着用義務が再開していたが、来週からはフランス国内の全ての小学校でマスクの着用義務が再開することになった。