フランストップの広報戦略

投稿日時 : 2020/03/09 18:15

民放テレビ局TF1の金曜夜のニュースから
「エマニュエル・マクロン:フルタイムでコロナウィルス」

ついにフランスでの感染者が日本よりも多くなったコロナウィルス問題。フランスと日本、さらにはイタリアや韓国、それぞれの国で検査の仕方が違い、検査対象の範囲も検査の母数も違うので、国ごとの感染者数、さらには死者数の比較は何の参考にもならない、とフランスのメディアで医療関係者が強調しているように、日本とフランス、どちらがより感染しているかはわからない。

それでも事態の深刻さは日本でもフランスでも大きいことは間違いない。首相と大統領がいるフランスでは、実質的な対応は政府が行う(とくに担当省庁の保健省)が、それでも国の長として、大統領も「広報キャンペーン」に繰り出した。というのが金曜夜から週末のフランスのニュースだった。

市町村議会議員選挙を控え、さらに国会で審議中の年金制度改革もあり、「広報戦略」として、フランスの大統領がコロナウィルス関連で選んだのが、パリの老人ホームの訪問だった。利用者達や職員と会話し、手洗いが大事ですよとか、もうすぐフランスで発動されるステージIIIについても丁寧に説明した。また、この週末、大統領はコロナウィルスとは関係のない訪問などの予定は全てキャンセルしたという。

また、先日のここのブログでは、フランスでは検査を希望(する症状がある)する場合には救急(15)に連絡が原則と伝えたが、フランスの医療関係者では、すでにその段階はすぎており、もはや疑いのある人すべてに検査をするのは意味がなく、市中感染があるという前提で、今の段階では、明らかな肺炎症状(呼吸困難など)の人や高齢者が優先だと訴え、風邪の症状があれば、自宅にこもって、高齢者や疾患のある人との接触はさけるようにとアドバイス。ステージ3に備えて、医療体制がパンクしないようにするべきと訴える。9割以上の感染者はなおるので、高齢者や基礎疾患のある少数の人を助けるという方針がよくわかる。

ところで、今回のCOVID-19の問題で、フランスが同じ間違いをしないようにと気をつけているのが、15000人が亡くなったとされる2003年の夏の猛暑だ。当時はとくに老人ホームなどで、高齢者が多く被害にあった。今回のウィルスも致命的になるのは高齢者ということで、今回のマクロン大統領の訪問となった。

フランスを始め世界のメディアでは、今回の日本政府の対応を、2011年3月の原発事故の時と比べている。当時も「メルトダウン」という言葉を政府はもちろん、メディアもほとんど津川叶ったように、今回のコロナウィルスの問題への対応も、政府もメディアも、専門家も、2011年のメルトダウンから何も学んでいないと、媒体によっては辛辣な批判がある。