トラッキング・武漢・エクアドル・ルーマニア

投稿日時 : 2020/04/07 18:00


本日ももちろんCOVID-19の話題が目に付く。日本が(ようやく)「非常事態宣言」をするのに対して、フランスは自宅待機から3週間。3-4週間前のフランスは今の日本と同じように死者数が100を越えようとしているときだった。日本はこれからフランスやイタリアのようにはならないかもしれないが、感染がより拡大している国から学ぶことはあるだろう。国内の感染拡大が深刻であるにも関わらず、フランスの新聞の視野は広い。

4月7日付けのLe Monde紙の一面もCOVID-19の話題が多いが、日本の新聞では相変わらず国内の話題、さらには足下の話題ばかりで、この世界的な感染問題にも、世界を見る視野もなければ、短中期的な将来を見据えた視点もない。これはメディアや政治家などの問題だけではなく、国民性の問題でもあるだろうか。


かえって、フランスはそれよりは、視野も広く、それはLe Monde紙の表紙の記事のタイトルからでもよく見える:

トップ:
「COVID-19:電話によるトラッキングの挑戦」欧州の研究者グループは、保険・医療省庁が患者の管理をするためのインフラを立ち上げようとしている。スマートフォンのアプリによって、罹患者がどこに行ったかではなく、誰と接触していたかを、近くにある他の電話を探知することで知れるようになる。中国と韓国はすでに、個人のプライバシーの尊重を問題にせず、一線を越えた。英国とドイツは準備段階に入った。CNIL(フランスの情報処理及び自由に関する国家委員会)の委員長は、このトラッキングに否定的ではないものの、「特別な注意」が必要と語る。

写真入り中央:
「中国:喪に服す武漢、死者への追悼」封鎖から抜け出す、パンデミックの震源地に戻って。中国のアラートシステムの遅さと隠蔽。

写真左:
「テロリズム:ロマン・シュル・イゼールのナイフ襲撃事件」
「裁判:裁判所は右往左往で減速」

写真右:
「マスク:マスク着用は全ての国民に拡げられる模様。きびすをかえす政府。」
「医療従事者:医療関係者には、もう一つの前線がある。自分たちの家族を、自分たち自身から守ること」
「エクアドル:第二の都市グアヤキルでは、数十体の遺体が路上に何日も放置」
「ルーマニア:マスクも何の防護もない医師たちの怒り」
「英国:10日前から病気のボリス・ジョンソンが入院、女王は国民の団結を訴えた」


スマホを使ったトラッキングは現在の感染拡大ではなく、将来的なものも見据えた動きで、政治だけではなく、研究者も取り組んでいる試みで、日本では韓国などでスマホから感染者の履歴を追跡するアプリなどが話題にされていたが、どちらかというと「個人情報を考えないやりすぎの対策」というニュアンスで、将来の感染対策の一つの研究課題としては紹介されていない。フランスではこうした技術的な研究や医療分野での研究状況はわりと紹介されている。武漢で起きている状況も、フランスはずっと現地からの情報を定期的に伝えているが、日本は武漢から、さらには中国からの中継、現地報告もほとんど見られない。

そしてLe Monde紙のこの一面の上部では、国内の話題は小さめだ。医療従事者の現状と、停滞している裁判事情、テロ事件、そして政府のマスク認識が180度転換したことだけだ。後者について、政府は当初は、マスクは必要ない、しなくてもよいという立場だったのが、いまでは外出禁止が解除されても外出時にはマスクの着用を義務化するという話が出るほどに方針転換したことがここ数日大きく話題になっている。