「エコ不安」の「エコ」は「エコロジー」

投稿日時 : 2021/09/16 17:30

「ペシミズム:最新の世界的調査で、気候変動と政府の無行動に対して多くの若者たちの苦悩が明らかになる」
20 Minutes紙のウェブサイトより。写真のプラカードは「地球も息が詰まり、僕たちも息が詰まっている」

日本では、二年近く経っても世界的パンデミックが国内問題であるかのように見ているように、地球規模の環境問題もまた、世界基準からすればほとんど語られていない。

先日、医学系の学術誌としても知られるランセットの姉妹誌、『The Lancet Planetary Health』が発表した報告はフランスのメディアでは割と大きく取り上げられている。(日本は皆無)

これは、世界の10カ国の16-25歳の若者に対して今年の5月と6月に行われたアンケート結果で、イギリスとアメリカとフィンランドの大学で心理学を研究する学者9名が行った。対象となったのは、オーストラリア、ブラジル、フランス、フィンファンド、インド、ナイジェリア、フィリピン、ポルトガル、イギリス、アメリカだ(アルファベット順)。

この調査によると、対象となった世界の16-25歳の75%は、未来を「怖い」と考え、半数はもはや人類を信じていないという。10人のうち4人が子どもを作ることを迷うという。この調査結果を受けて、フランスのメディアでよく聞かれる言葉は、「Eco-anxiété」(エコ・アンキシエテ:エコ不安)だ。英語の「Eco-anxiety」がフランス語になったものだが、フランス語にこの言葉とコンセプトを紹介したのは、2019年にAlice Desbiolles医師が書いた『L’éco-anxiété : vivre sereinement dans un monde abîmé(エコ不安:壊れた世界で穏やかに生きる)』だといわれる。

この言葉と現象は、単なる流行の一過性のものではなく、今の若者たちの一つの心理状態、さらには精神疾患といえるくらいに重大なものとする意見もある。あえて日本の現状で比較すると、近年の日本の子どもたちなどについていわれる「発達障害」くらいに重大な問題になりうるとされる。

この症状は、世界のあらゆるところで起こっている異常気象(気温の上昇、水面の上昇、大地震、津波、台風やハリケーン、山火事など)だったり、欧米のメディアがよく報じるプラゴミの問題や、生物多様性の危機などの現実を前に、子どもたちが感じるのは、将来に対して不安や恐怖、怒りや悲しみ、絶望、罪悪感、屈辱など。まさに「世紀病」といってもよいとされるが、ここから生まれる希望もあるという。

こうした病に悩む若者たちは、自ら行動することでこの病に打ち勝つ。それは個人的な行動、生き方であったり、集団のなかでの行動だったりする。そして、こうした若者たちの希望への行動もフランスをはじめとした欧米のメディアでは報じられている。

2022年の大統領選挙でも、フランス国民が感心があるテーマで、感染症対策の次にフランス人が関心を寄せるのが環境問題という世論調査も発表されたばかりだ。