大討論:最新の分析方法

投稿日時 : 2019/03/25 18:30

3月21日のL’Humanitéの記事。同紙のサイトより。

二ヶ月間のフランス全土での行脚を終え、終了した「大討論会」。毎回数時間に及ぶ大統領と各地の市民との討論はもとより、さまざまな集会が開かれ、各市庁に置かれた陳情書、ウェブサイトでの投稿など、多くの意見が集められた。

実に1万回近くの大小の会合・討論会、100万を超える投稿、1万をこえる陳情書があると、上記のL’Humanitéは記している。さらに先日は専門家60名を招いて意見交換もしたし、今後は労働組合やNGOなどとも意見交換、さらに国会での討論もある。

ジレ・ジョーヌの運動への答えとして、この「大討論」を企画し、これで市民の意見を聞く、としたマクロン大統領だが、どうやって、これをまとめるのか。


この分析、統計で話題となっているのが、AIの使用(フランス語では、Intelligence artificiell、なので、IA)だ。

France Cultureのサイトより。「AIが大討論会の手助けに」

France Cultureのサイトの記事では、分析方法を詳しく解説している。

まずは、手書きも含めた陳情書、各討論会のリポート(各都市で、リポートを作る人がいた)、役所や政府に送られてきた手紙やメールなどは、すべて、国立国会図書館に送られて、スキャンされる。これをまとめるのが、コンサルティング会社ローランド・ベルガー。

次に、公式サイトでの投稿は、OpinionWayというフランスのマーケティング・統計会社。公式サイトでの投稿には、選択肢がある質問と、自由筆記の質問があったが、後者の分析は手がかかる。同じ言葉をコピペしたり、同じような内容を何度も投稿したりしているのを精査しないとならず、こういった作業にAIの手を借りるという。どういうコンテキストで、どういうニュアンスである言葉が使われているかも判断させるという。

そうしたAIの分析は、5名の保証人(garant)と呼ばれる人たちがチェックする。(が、この5人もそもそも政府よりの人間だと、上記のL’Humanité紙(共産系)などは批判)

そこで、そうなることは当然織り込み済みで、政府もOpinionWayも「オープンデータ」を提案、他の機関も分析してもよいとした。すでに数十の団体・機関が、独自の分析をするといっている。その一部はすでに公開されている。(下記画像)

左は、Cartolabeというプラットフォームで、通常は論文などの分析に使われているもの。右は、2017年の大統領選挙の時にも注目されていたPolitoscopeというサービスで、この開発には研究機関CNRSも関わっている。

さらに(!)、公式サイトでの情報だけは偏っている、完全ではないという考えのもと、一部の研究者などは、他のサイトの情報、例えば、ジレ・ジョーヌによって作られたサイト(le-vrai-debat.fr/)や、SNS上の同期間の情報も欲しいといっている。

このように、政府は政府としての結論を出すのだろうが、それ一つでは当然無いし、その解釈もさらに多様だろう。