FBは世論操作をしているのか。

投稿日時 : 2019/06/06 18:00

6月5日、France 5の番組、C à vousより。監督と、ドキュメンタリー「La nouvelle fabrique de l’opition(新しい世論操作)」

日本では、アメリカでの話題を取り上げる形で、GAFAに関する規制を取り上げているが、フランスでh、6月5日、ネットメディア局Spiceeと週刊誌 Le 1が共同で行ったFBに関するドキュメンタリー取材を、公共放送局、France 5の生放送番組が紹介した。

これは、上記の独立系メディアが、ジャーナリスト志望の学生の協力のもと、フェイスブックに異なる政治的プロフィールを6つ作り、フェイスブックがどのように機能するかを調査するというもので、先日あったヨーロッパ議会選挙に向けて、フェイスブックに「潜入調査」を行ったものだ。

調査の詳細は、Spiceeのサイトで有料動画で公開され、Le 1の誌面でも紹介されているが、これらを取り上げたこの番組(C à vous)でも一部を紹介。

6つのプロフィールは、政権政党、極右政党、ジレ・ジョーヌ、極左政党、社会党系、右派政党。その中でも、趣味で、特定のサッカーチームを応援しているとかという設定などもした。

いずれのプロフィールでも、しばらくすると、友だち申請も、タイムラインにあがってくる話題も、すべてそれぞれのプロフィールと同じ政治的プロフィールのものばかりに偏ってきたという。さらに、本来、ある政党へのフォロワー数の数百倍もフォロワーがいるはずのサッカーチームの話題や友人候補はまったくでてこなかったという。結果、明らかに、FBでは同じ傾向、しかも政治的な要素で(これもフランスだからかもしれないが)ユーザーをまとめているようだという。もちろん、FB側からは一切の返答は得られずなので、どのようなアルゴリズムが働いているかはわからない。

ドキュメンタリーの一画面。

ヨーロッパ議会選挙近くになっても、とくに政治的な議論などはタイムラインに上がっては来なかったと言うが、選挙日当日(フランスでは選挙日の前日からテレビやラジオでは選挙関連の放送は禁止)になると、それぞれの政治的プロフィールで、過激な発言などがタイムラインに上がってきたという。

ドキュメンタリーの一画面。ノートル・ダムの火災のあと、FBでのタイムラインのキャプチャ。

さらに、ノートル・ダムの火災の際には、それぞれの政治的プロフィールによって、タイムラインにあがってくる話題が異なり、政権政党支持のプロフィールには、火災はジレ・ジョーヌのせいではないかという投稿、左派政党支持には、復興のお金の話、極右政党支持には、キリスト教が被害にあったという投稿がタイムラインにあがってきたという。

反対意見などがタイムラインに上がることはなく、どんどん感情的な投稿や、激しいものばかりがあがってきて、同じ政治的プロフィールでの偏りがどんどん顕著になっていったという。

このドキュメンタリー取材を企画し、この番組に呼ばれた監督、Thomas Huchon(トマ・ユション)は、FBなどのソーシャルメディアでは、NASAの宇宙専門家も、YouTubeで動画を数本見ただけの中学生も、それぞれのアカウントの価値(どれだけ他のユーザーとリンクしていくか)という観点では同じだと言う。そして、かつて、ジャン・リュック・ゴダールがテレビ(一般)について言葉を引用し、「la démocratie, ce n’est pas cinq minutes pour les juifs et cinq minutes pour Hitler」(民主主義とは、ユダヤ人に5分、ヒトラーに5分ではない)といい、FBが逆に発明したのは、「すべてのコンテンツは同じ価値があり、違いはどれだけの人を惹きつけられるか」だという。