失墜ドラマ、または反撃ドラマ

投稿日時 : 2020/01/09 18:00

L’Obsのウェブサイトより。「独占取材:カルロス・ゴーンがずっと隠していた家族の悲劇」

日本時間昨晩、フランス時間では午後、カルロス・ゴーン日産前会長の会見は日本のニュース番組やフランスのニュースチャンネルなどで生中継された。まさに日本でも、フランスでも、同時にインパクトがある時間を選んでの会見で、その後、もちろん日本でもフランスでも大きく報道されているが、フランスのメディアが自ら認めるように、おそらく、日本ではなく、フランスで最も大きく取り上げられているという。

今回の「逃亡劇」を含む一連の「ゴーン・ドラマ」自体の大きさというよりは、このような「グラン・パトロン」(権力者)の失墜がフランス人は好きなのだと見える。フランス革命で王政を失墜させ、一時は英雄であったナポレオンも失墜、第二次世界大戦中にはナチスの権威にレジスタンスで反発、今も政府の年金制度改革に反対しクリスマス商戦期間を挟んで1か月以上もストライキして権力に反発するのがフランスだ。

ゴーン氏の場合、かつての権力者が失墜していくというだけではなく、今や逆に日本の法制度や日産という権力者と闘う姿勢を見せていることも、この「ドラマ」が人気な理由なのだろう。

日本では、逃亡の手口についてや、ゴーン氏の会見のまとめや日本政府などの反応を紹介するにとどまっているのが多く見られ、独自取材や解説はあまり全面には見られないが、フランスのメディアでは、ゴーン氏がしゃべったことをまとめるだけではなく、その解説・分析をしている。多くは、この「グラン・パトロン」は確かに演説が得意で、会見はかたちとしては成功しているが、中身はなく、納得する点はなく、この会見もその直前の妻によるフランスの新聞へのインタビュー記事もコミュニケーション戦略として解説。年金制度改革とは全く違うが、同じように様々な側面があり、いろいろな面から取り上げることができる話題だ。

Le Figaro紙では、ゴーン氏の会見を取り仕切ったとされるフランス人女性に注目。もともとゴーン氏と面識はないものの、フランスの大手PR会社の創設者でこの業界でよく知られる人物だという。いかにゴーン氏がコミュニケーション戦略を用意しているかという分析だ。

また、L’Obsでは、いくぶんパパラッチ的な話題だが、ゴーン氏の過去に注目、これはゴーン氏の父親が実はかつて死刑宣告をうけ投獄されていた(死刑執行はされず)というスクープだが、1月7日に公開され、その後他のメディアも言及している。日本のメディアにはまだ紹介されていない。上記の記事のタイトルで検索すればフランス語で様々な情報が出てくる。

とはいえ、本日のフランスの大きな話題はもちろん、本日ですでに36日目のストライキ、そして4回目の大規模デモだ。

Le Figaro紙のサイトより。
「カルロス・ゴーン:アンヌ・メオーが指導したコミュニケーション」