黄色の危機

投稿日時 : 2020/01/30 18:00

「コロナウィルスとともに、フランスで拡がるアジア人人種差別」
Le Monde紙のサイトより。暴言が引用されているがその部分は訳していない。

コロナウィルスの話題は、日本と同じようにフランスでも大きく報道されている。日本でもフランスでも、現地在留の自国民の避難のニュースや、国内の感染者の話題が多い。

ただ、フランスのメディアでは避難してきた人や感染の恐れがある人については、基本的にプライバシーを重んじるのと、個々のニュース性よりも、ウィルスの拡散の危機という大きな問題のほうに焦点が当てられている。

そして、フランスらしい話題としては、この問題が人種差別的な拡がりを見せているというニュースが多くなってきている。これに大きな火をつけたのが、ある地方紙が一面で、「Alerte jaune」という見出しをつけたもの。これは「Péril jaune(yellow peril:黄禍論)を彷彿させる言葉で、人種差別だと非難。あっという間に他のメディアでもSNS上でも炎上状態に。ただし、これはこの地方紙が特殊な例ではなく、そうした雰囲気がフランスで拡がっている一端で、様々な人種差別的な言動が報告されている。

救急の電話には、「中華料理を食べたけど、感染することはないのか」という問合せもかかってきていたり、空港や街中で中国人が罵声を浴びせられることは多いという。また店舗やレストランで働いているアジア系の人びとも顧客から近づかないでくれと言われたり。

先週はホロコーストの関係で、現代の反ユダヤ主義についての話題があった(今でもまだ現代的なかたちで残っているという)が、次は黄色人種に対しての人種差別が拡がっている。フランスだけではなく、世界からみたら、中国人も日本人も韓国人も、フィリピン人もすべて、黄色人種はすべて一緒、区別は付かず、在フランスの日本人や韓国人、すべての黄色人種(に見える人びと)がこうした人種差別の対象になっている。

日本で中国人観光客が増えてきたのは最近だが、フランスはそれ以前から中国人観光客の数は多く、さらにパリだけではなく、大きな地方都市でも中国料理店は数十年前から多く、フランスで見かける中国人は多い。さらに黄色人種の区別がつかないとなれば、アジア系の人はわりと多く見えるはずで、フランス人にはそれが全て脅威に見える人もいるようだ。

さらに加えれば、アジア圏のようにマスクを日常でつけることがないフランス人にとっては、日常生活での防衛策が全くないために、余計に脅威に感じるのかもしれない。

先に紹介した地方紙はもちろん、すぐに謝罪し、説明したが、黄色は、黄色人種の黄色ではなく、イエローカードのような「注意」の意味であったというが、それでもこの言葉の選択は無自覚だったと非難されている。