流行のフランス語:ensauvagement
投稿日時 : 2020/09/09 18:00
新年度から政治のニュースなどで取り上げられているのが、「ensauvagement」という言葉だ。
これは、新しい内務大臣、ジェラルド・ダルマナン(Gérald Darmanin)が使い始め、多用している言葉で、これは内務大臣になったばかりの時の7月末の新聞のインタビューで使い始め、「社会の一部のEnsauvagementを止める」のが自分の使命と語ったことにある。
Ensauvagement(オンソヴァージュモン)とは、sauvage(野蛮)からの造語で、接頭辞のen-(「〜になる」「〜の中に」などの意味を持たせる)をつけることで、ensauvagerという動詞で、「野生化、野蛮化する・させる」となる。-mentは、動詞を名詞に変えるので、Ensauvagementは、「野蛮化」となる。
つまり、内務大臣は、現代のフランス社会の問題は、一部が「野蛮化」しているとして、それを正すことが自分の使命としているということだ。かなり湾曲しているが、「野蛮」とは、人間ではない、フランス人ではない、という別の言い方ともいえ、このいわばグレーな、ある意味差別的な物言いで、反発が出ている。この言葉に反対している人には、新しく民間(つまり現役の弁護士)から採用された法務大臣もいて、それがさらにこの議論に火をつけている。
メディアはメディアで、このキャッチーなフランス語に飛びついて、さらにはそれをとりまく議論もなかば面白がっているようにも見える。
ただ、世論調査(これもこの話題を面白がっているメディアが調査したのだろうが)では、7割のフランス人はこの「野蛮化」という言葉は適切だとしている。この背景には、もうフランスで何十年も現象は異なるとはいえ、フランス社会の問題である「insécurité:不安(と訳すが、むしろ、安全の欠如というニュアンスが強い)」に対しての関心が強いことがある。Covid-19もしかり、デモで暴徒化するグループもしかり、テロもしかり、また経済不安もそうであるといえる。そうしたフランス人がずっと根強くもっている「安心感の欠如」へのはけ口を「社会の野蛮化」という言葉を使って表現したということだろう。
20年以上前には似たような言葉を当時のやはり内務大臣が使って物議をよんだが、それも、sauvageからの造語で、「sauvageons:野蛮なやから」(-onは、小さいを意味する:例、chat:ネコ、chaton:子ネコ)という言葉だった。また、2005年にも、またしても当時の内務大臣(ニコラ・サルコジ)もパリ郊外での暴動騒ぎの際に「racaille:ごろつきども」という言葉を使い、問題になった。
そこで、弁が立つマクロン大統領も、この言葉の問題についてジャーナリストから聞かれ、答えた。大統領は、メディアは「野蛮化のカーマスートラ」をやっているだけだとメディアを批判した。ここでもわざわざ「カーマスートラ」という言葉を選ぶのもマクロン大統領らしいといえばそうで、もちろんメディアはこの言葉にも飛びついている。
流行のフランス語:ensauvagement
投稿日時 : 2020/09/09 18:00
新年度から政治のニュースなどで取り上げられているのが、「ensauvagement」という言葉だ。
これは、新しい内務大臣、ジェラルド・ダルマナン(Gérald Darmanin)が使い始め、多用している言葉で、これは内務大臣になったばかりの時の7月末の新聞のインタビューで使い始め、「社会の一部のEnsauvagementを止める」のが自分の使命と語ったことにある。
Ensauvagement(オンソヴァージュモン)とは、sauvage(野蛮)からの造語で、接頭辞のen-(「〜になる」「〜の中に」などの意味を持たせる)をつけることで、ensauvagerという動詞で、「野生化、野蛮化する・させる」となる。-mentは、動詞を名詞に変えるので、Ensauvagementは、「野蛮化」となる。
つまり、内務大臣は、現代のフランス社会の問題は、一部が「野蛮化」しているとして、それを正すことが自分の使命としているということだ。かなり湾曲しているが、「野蛮」とは、人間ではない、フランス人ではない、という別の言い方ともいえ、このいわばグレーな、ある意味差別的な物言いで、反発が出ている。この言葉に反対している人には、新しく民間(つまり現役の弁護士)から採用された法務大臣もいて、それがさらにこの議論に火をつけている。
メディアはメディアで、このキャッチーなフランス語に飛びついて、さらにはそれをとりまく議論もなかば面白がっているようにも見える。
ただ、世論調査(これもこの話題を面白がっているメディアが調査したのだろうが)では、7割のフランス人はこの「野蛮化」という言葉は適切だとしている。この背景には、もうフランスで何十年も現象は異なるとはいえ、フランス社会の問題である「insécurité:不安(と訳すが、むしろ、安全の欠如というニュアンスが強い)」に対しての関心が強いことがある。Covid-19もしかり、デモで暴徒化するグループもしかり、テロもしかり、また経済不安もそうであるといえる。そうしたフランス人がずっと根強くもっている「安心感の欠如」へのはけ口を「社会の野蛮化」という言葉を使って表現したということだろう。
20年以上前には似たような言葉を当時のやはり内務大臣が使って物議をよんだが、それも、sauvageからの造語で、「sauvageons:野蛮なやから」(-onは、小さいを意味する:例、chat:ネコ、chaton:子ネコ)という言葉だった。また、2005年にも、またしても当時の内務大臣(ニコラ・サルコジ)もパリ郊外での暴動騒ぎの際に「racaille:ごろつきども」という言葉を使い、問題になった。
そこで、弁が立つマクロン大統領も、この言葉の問題についてジャーナリストから聞かれ、答えた。大統領は、メディアは「野蛮化のカーマスートラ」をやっているだけだとメディアを批判した。ここでもわざわざ「カーマスートラ」という言葉を選ぶのもマクロン大統領らしいといえばそうで、もちろんメディアはこの言葉にも飛びついている。