もう独りで自動車には乗らない。

投稿日時 : 2019/12/10 18:00

「もう独りで自動車には乗らない。ストがどうやって相乗りに火をつけたか。」
Le Point誌のサイトより。

フランス政府は明日、年金制度改革の全容を発表することになっているが、本日もストライキは続き、大規模なデモも予定されている。電車・地下鉄・バスは相変わらずかなりの、というかほとんど運行していなく、国鉄の駅はがらがら。パリではやっときた地下鉄やバスはすし詰め状態。ヴェリブや電動キックボードも使用できるものが少なかったり、壊れていたり。道路もさすがに超渋滞状態。
観光客への影響、クリスマス商戦を迎えての経済への影響も語られる中、取り上げられているのが、この記事にもあるような「相乗り:covoiturage」の人気だ。

これは数年前からフランスで流行っているシステムで、AirBnBの民泊と同じように、アプリを使って相乗りを提供・利用する。最初に始めた大きなアプリは、BlaBlaCarというアプリ・サービスで、自動車でどこかへ行く人が空いている座席を提供し、どこかへ行きたい人が空いている座席を探す、という自動車のシートのマッチングアプリだ。

そもそも、日本と比べ、フランスでは、下記のような事情で、こうしたサービスが拡がる土壌があった。
・公共交通機関が時間通りに運行しないことがある。
・地方などでは路線バスなどの交通機関がなかったり、タクシーがない場所もある。
・ガソリンが高い。
・環境問題への意識が高く、1人の移動に1台の自動車を使うことは環境への配慮が足りないとされる。

スマホの利用が広がる前は、学生などは、キャンパス内や学食の掲示板に相乗り希望の告知を貼っていたものだが、スマホとアプリのおかげでこうした相乗りマッチングがスムーズになった。今回のストライキでこの相乗りマッチングがさらに発展しているのが、バスや地下鉄に変わる交通手段としての可能性だ。これまでの相乗りマッチングはどちらかというと旅行とか、ちょっとした遠出などだったが、自宅から職場までという定期的かつ日常的なルートでの相乗りだ。BlaBlaCarもそれに特化したBlaBlaLinesを開始、別の会社でも、Karos、Klaxitというアプリもある。さらには、mobicoopというサイトは、協同組合的な立場で、手数料などはとらずに、相乗りマッチングを提供している。これらはかなりフランス的なサービスだ。

先週から始まったストライキのおかげで、BlaBlaLinesでは、登録者が数倍にも増えたという。政府(環境担当大臣が発表)もこの動きを推奨。3人以上乗車している一般車は、バスとタクシー専用レーンを通行してもよいとした。

1995年のストライキの際には、自転車やインラインスケートが人気になり、パリに自転車専用レーンがその後拡がったように、今回のストライキで相乗りシステムがさらに拡がるかもしれない。数年前から拡がっている自転車やキックボードのシェアリングは、やはり必要なときに必要な場所になかったり、壊れていたり、いたずらで使えなかったりだが、相乗りはこれからさらに可能性があるかもしれない。