内務大臣の発言に怒る国中の警察官

投稿日時 : 2020/06/12 17:00

「サン・ブリユーでは、警察官が象徴的に手錠を地に置いて抗議の意を示す」
地方紙 Le Télégrammeのサイトより。

今週、フランスで大きく話題になっているのが、クリストフ・カスタネール内務大臣の発言だ。

これはアメリカから端を発した白人警官による黒人男性の殺害事件からフランスでも警察官の逸脱行為が取り上げられ、Facebookのプライベートグループで警察官達が人種差別発言などをやりとりしている事実が発覚していた。

そこで、フランスでは「警察官のトップ」ともいわれる内務大臣のカスタネール氏が、警察の引き締めをアピールするために発言した言葉「Soupçon avéré」を発端に、メディアはもちろん、警察官の間でも反発が強まっている。

カスタネール氏は、警察官や憲兵が人種差別的な発言や行為をしたという「疑惑:soupçon」が、「明白だとされた:avéré」場合、停職処分など、それなりの厳しい対応をする、という旨の発言で、人種差別はゆるさない、という姿勢をみせたつもりだった。

ところが、この「明白な疑惑」とはなにか、と一斉に批判を浴びた。フランスでは、個人の自由や、発言の自由などと同じく、Présemption d’innocence(日本語では「推定無罪」と司法用語で訳されるが、フランスでも司法用語であるが、Présemption d’innocenceは自由と同じくらい一般の言葉だ。疑惑とはそもそも明白になる(avérer)ものではないから疑惑であり、明白になったらそれは疑惑ではなく、罪になる。

内務大臣はその後、発言は取り消してはいないが、言い方を少しかえているが、それでもメディアに拡がり、警察官にも拡がった反発はとまらず、フランス中の警察官が抗議の行動をしている。

内務省関係者でも、この「明白な疑惑」発言は、実際のなんらかの命令ではなく、「ショッキングな発言」で世論に訴えただけだと説明している人もいるという。

いずれにせよ、警察(国家権力)による一般市民への暴力(フィジカルな暴力も、言論の暴力)の問題は、Covid-19の問題が下火なったいま、バカンスが始まるまではしばらく続きそうで、一部の地域の警察官は本日からストライキで、緊急を要する場合以外は働かないという。