議論の手法や素材についても議論するフランス

投稿日時 : 2021/10/05 17:30

「大統領選、独占世論調査:エリック・ゼムールは12〜15%の支持率」
ニュース専門民放テレビ局LCIのウェブサイトより。

フランスの大統領選挙シーズンになると、定期的に話題になるのが、世論調査だ。フランスではいくつかの大きな世論調査機関があり、様々なメディアが単独あるいは共同で調査機関に依頼をして、その調査結果を発表するという仕組みだ。

つまり、調査機関も複数あり、調査を依頼するメディアも様々なので、かなりの頻度で、世論調査が発表されるということになる。そのときの社会状況や政治状況で、もちろん支持(厳密にはフランス語では、Intentions de vote:投票予定)率は異なる。

2022年4月10日の第一回投票まであと半年あまり。今年の4月あたりから始まっている大統領選挙の世論調査だが、ここまでの傾向は、大方の予想通りだ。いまだ公式な出馬発表をしない、極右系のジャーナリスト・評論家、エリック・ゼムール氏が、伝統的な極右政党の代表のマリーヌ・ルペン氏に迫ってきており、第一回投票の上位は、エマニュエル・マクロン現大統領、マリーヌ・ルペン、エリック・ゼムールとなっている。

「大統領選2022調査:全ての左派候補は10%以下」
9月30日公開、10月1日アップデートの、経済紙Les Echosのウェブサイトより。
ちなみにこれも別のメディアによる別の機関に依頼した世論調査だ。

ところが、一部の解説者や専門家は、上位三人ではなく、それに以外に注目する人もいる。9月30日の経済紙Les Echosは、支持率が未だに10%に届いていない5名の左派系候補をとりあげた。つまり、極左のジャンリュック・メランション、社会党で現パリ市長のアンヌ・イダルゴ、エコロジー系の統一候補のヤニック・ジャド、共産党のファビアン・ルセル、もと社会党で大臣経験もありながら今は民間の経営者のアルノ・モンブールだ。この全員を足せば26%となり、決選投票に進めるばかりか、大統領になることも不可能ではなく、論調は、なぜ左派系は一致団結しないのかというニュアンスにもとれる。

こうした世論調査の発表のたびに、もちろん、その数字の解説や分析でまた議論がもりあがるばかりか、同時に、こうした世論調査は意味がないとか、信頼性がないとか、過去にも(つい最近の選挙でも)まったく予想と違う結果になっていたという議論もおこり、調査される側の政治家も、メディアの解説者でも世論調査は当てにならない、さらにはステルスマーケティングにもなりうるという説まででてくる。これも大統領選挙などの重要な選挙のたびに繰り返され、候補者の乱立についてもまた、毎回同じような議論が繰り返される。