組合と年金改革

投稿日時 : 2019/11/22 18:15

「年金問題:フィリップ首相が政治の場で主導権を握ろうとする」
Libération紙のサイトより。

日本では昨日、労働組合の中央組織である「連合」が結成から30年を迎えたというニュースがあり、最近ではその力、政治への影響力が弱くなっているという報道が多かった。フランスでは、12月5日(木)は、労働組合が主導の大規模ストライキが計画されており、次第に参加する団体も増えつつあり、かなり大規模なものになると予想されている。

このストライキの発端は、フランス政府がすすめている年金改革への反対だ。日本ほどの高齢化にはまだなってはいないが、日本と同じように年金制度が抱える問題は同じで、財政確保と国民の年金の補償が問題となっている。

マクロン大統領は2025年までに、従来からある特例扱いの数十の職種をすべて一元化する改革案を打ち出しており、今回(というよりこれまで何度も他の政権でも手をつけようとしていたが失敗)のデモ・ストライキは、まさにこれまでいわば「優遇されていた」職業の、鉄道職員や専門職などだ。

なので、12月5日は、フランス国鉄(SNCF)、パリ交通公団(RATP)、エールフランスの地上職員が大規模ストライキ、さらには高速バスや運送トラックもストライキ。さらには弁護士や、電力会社(EDF)も公的施設などへの送電停止、警察官も一部でストライキ、公共病院の看護師もストライキを予定している。その他にも公務員などがストライキを予定。これらはほとんど全てが組合が関わっている。さらに(!)、「ジレ・ジョーヌ」もこの日にデモ行為をすると予定しているほか、学生たちも合流する可能性があるという。

そうしたなか、昨日、11月21日(木)、フィリップ首相は、9月に依頼していた、年金改革についての専門者諮問機関からの報告を受けた。首相は、いくつもの提案を受けたが、「年金受給額の減額」や「現在の年金保険料の値上げ」は考えられないとし、年金の受給開始年齢の変更も「賛同しかねる」とした。そこで検討しているのが、Libérationの記事がまとめているように、「納付期間の引き延ばし」と「年金受給の基準年齢の導入」だ。

これが、政府から国民に対する「落としどころ(フランス語では terrain d’entente)」なのだろうか。12月5日までまだ2週間、それまでに政府も組合側もお互いがいろいろと牽制をかけたりすると思われる。