過激化:radicalisation

投稿日時 : 2019/10/08 18:00

L’Express誌のサイトより。「警察は、警察内職員のイスラム教の過激化への対応に苦労している。」

日本では、学校の先生同士のいじめ問題が話題になっているが、フランスでは、先週、パリ警視庁で起こった職員による同僚の殺害事件のあと、次第に詳細が明らかになっている。

今朝の話題は、自宅から押収されたUSBメモリーにダエッシュ(Daech。日本では「イスラム国(IS)」との表記が多い)のプロパガンダ動画や、同僚の個人情報があったという。それ以前にも、次第に犯人の「Radicalisation」(ラディカリザシオン:過激化)を裏付ける証言などが相次いであらわにされた。

そこで、メディアで大きくとりあげているのが、この事件自体のことだけではなく、このRadicalisationについて。ここ数年、テロが相次いだフランスでは、この手の話題の際にはよく使われる言葉だ。イスラム教(あるいは他の宗教など)に改宗する(se convertir / conversion)こと自体は、個人の宗教の自由で問題はないが、このRadicalisationという言葉、「過激化」という場合は、まさに過激、極端なケースになる。

テロ事件が相次いだフランスでは、テロリストがテロ行為を実行にうつす前に食い止めようと、要注意人物を監視する専門機関があり、まさに「要注意」とされる大きな要素の一つが、このRadicalisationだ。

ここで問題となるのが、どこからがテロ行為や今回のような犯罪に繋がるRadicalisationと判断するかだ。どこまでが個人の自由な意見の範囲内での「急進的」な考えや行動とされ、どこからが他者などに危害を加えるほどの「過激」な考え・行為なのか。

今回の場合、警察内ではもちろん、職員などの異常な行為などを同僚などが申告するシステムはあり、そうした報告もあったという。30万人ほどの警察官・憲兵で30名ほどがそうしたプロセスで要注意とされ、内務大臣によると、2015年以降、6名の警察職員を免職したという。

今回の犯人にもそのような調査がされたというが、書面では記録がなかったり、特に問題がないとされていた。さらに、この犯人には障害があり、そのために、報告する側が差別していると逆に非難されることを恐れたのではないかともいわれている。

さらにこの事件があった前日、パリでは3万人ちかくの警察職員がデモをしていた。これは警察職員の労働条件の改善、とくに警察職員の自殺が多くなっている(今年に入ってすでに50人以上)ことが引き金だった。

今回の事件は、フランスにおけるRadicalisationの問題だけではなく、それに対する対応の難しさ、さらに警察の組織自体の問題がもちろん絡んでいるのだが、はっきりとした原因や解決策はなかなか見つからないかもしれない。それでもしばらくはこの問題について多く語られ、何らかの具体的な対応策がとられるのがフランスかと思う。