新しい(間違った?)フランス語

投稿日時 : 2020/10/20 18:00

「“彼らはあの教師に対してファトゥワを出した”と怒るダルマナン(内務大臣)。
ところで、ファトゥワとは何か?」
L’Obs誌のサイトより。

金曜夜のテロ事件からメディアで頻繁に耳にする言葉が「ファトゥワ(Fatwa:女性名詞)」だ。内務大臣も率先して使っているこの言葉は、アラビア語で使われている宗教用語だ。ただし、この記事にあるように、フランス語ではもともとの意味からかなり意味を拡げて使われている。

今回のテロ事件で言うと、13歳の女子中学生の父親とされる男性が、SNSなどで、殺された中学校教師を非難する投稿を繰り返し、それが「ファトゥワ」となり、今回のテロ事件を引き起こしたとされる。

この言葉がフランス(語)で使われるのは最近ではなく、過去には1989年に、『悪魔の詩』の著者サルマン・ラシュディ氏に宣告されたイスラム法の解釈がそれで、日本語では「ファトワー」としている。つまり、本来は、イスラム法の解釈ができる権威がある人が行うものだが、現在のフランス語での用法では、単純に「死刑宣告」あるいは単なる「脅し」や「脅迫」、日本で言うと、SNS上で炎上させるための標的にするというくらいの広い意味で、対象はイスラム教に反する(と思う)ものだ。なので、過去にはポケモンすらこの標的にされたこともある。

少し前は、マクロン大統領も「Ayatollah:アヤトラ」という言葉(日本語では、「アーヤトッラー」)を使い、全く関係のない状況で、アラビア語の宗教用語を使ったことがあるが、こうした本来の意味とは異なる使い方を政治家やメディアがすることにも批判の声も上がっている。

また、本日、マルレーヌ・シアッパ市民権担当大臣が、フランスのSNS(Facebook, Twitter, SnapChat, Youtubeなど)の代表を呼び出し、意見交換をするという。

今回の事件の構図としては、現在のフランスに根付いて(しまって)いるイスラム原理(過激)主義が、SNSを巧みに利用して、フランス共和国を攻撃している。その攻撃対象が、新聞社だったり、教師だったりと、フランスが大切にしているものだ。

一部の識者には、もう「内戦状態の一歩手前」というくらいの非常事態で、本当にコロナ禍どころではなく、ましてはあと二ヶ月あまりのクリスマスもまだまだ現実味がないフランスだ。