チョコレートとアムールとローズ

投稿日時 : 2020/02/14 18:00

「ボルドー:バレンタインデーのバラをボイコットする花屋さん」
地方紙 Sud Ouestのサイトより。

本日は日本では「チョコレートの日」、フランスでは「愛の日」のバレンタインデー。

日本ではデパートやケーキ店などでのチョコレートフェアなど、テレビ番組でもチョコレートケーキのレシピや、チョコレートとそれに変わるバレンタイン商戦の話題ばかり。

フランスのバレンタインデーは、「愛の日」で、特にある特定の商品と結びつけられているわけではなく、エッフェル塔や新聞紙上などでの愛のメッセージサービスの話題、テレビは、様々な「愛」の話題を取り上げ、日本の「新婚さんいらっしゃい」のようなカップル登場番組では、女性同士のカップルを招いたり、愛の行為についての番組(日本だとおそらく「コンプライアンス」でひっかかりそうな内容など)もあり、様々なかたちの「愛」が語られる日だ。

そして、全ての話題と同じように、こうした商業的なイベント(「愛の日」とはいえ)に異を唱える人もおり、それをそのようにメディアも取り上げるのがフランスだ。

なかでも、「普通の」バレンタインデーに異を唱えるもので、昨日からよくフランスで取り上げられているのが、愛の日のプレゼントの赤いバラをボイコットするという運動。これは、On Est Prêtという団体などがはじめたといわれ、SNS上でもハッシュタグ「バレンタインデーに赤いバラはいらない(#pasderoserougealasaintvalentin)を使うなどして拡散中だ。インターネットのお花屋さんサイトも、この運動に参加している。

これは、バレンタインデーというマーケティングイベントに対抗した市民運動ではなく、環境問題でもある。赤いバラ、フランスの冬における赤いバラは、遠い国から冷蔵状態で航空便で運ばれるという、“カーボン・アカウンティング”(Carbon accounting (英語)、bilan carbon(仏語)の面から非常に環境に悪いものの象徴で、かつ、それが「愛の日」というマーケティングに利用されているのだ。ある試算によると、赤いバラの一束を輸入する“カーボン・アカウンティング”は、パリ・ロンドンの片道飛行に匹敵するという。また、フランスのフローリストには、“スロー・フラワー”(フランスでも英語で)という考え方をとりいれ、ローカルな花々のみを扱う人たちもいる。

「“バレンタインデーにはバラはいらない”:環境のために立ちあがるリヨンの花屋」
国営テレビ局France 3地方局のサイトより。

こうした環境意識、「意識高い系」は、もちろんフランスの大多数ではないが、フランス(やヨーロッパでは)こうした動きがあり、それをメディアもとりあげるのがフランスだ。

外国産の高いチョコレートを冷蔵で空輸して、いくらリサイクルするとはいえ、何重にもプラスチックや紙で包装して、それを、インフルエンサーとYoutubeを先取っていた“タレント”とテレビ番組が紹介している国は、フランスから見たらどう見えるのだろうか。日本ではそもそも、一般市民にはもちろん、メディアなどでもいまだ“カーボン・アカウンティング”という考え方も言葉も拡がっていない現状で、フランスのような国と地球規模の環境問題はどう語ることができるのだろうか。