鶴の一声は30分

投稿日時 : 2020/03/13 18:00

フランスのCOVID-19
マクロン大統領の演説

昨晩、マクロン大統領は、新型コロナウィルスこと、COVID19の感染がフランスで拡がって初めて国民に向けたテレビ演説を行った。30分近くにわたって、フランス国家の対策方針を具体的に、わかりやすく、基本的な方針・姿勢を明確にした。

このテレビ演説、フランスのマクロン大統領が得意とするもので、アメリカのトランプ大統領もCovid-19についてテレビ演説を行ったが、アメリカの大統領が棒読みのように見えるのに対し、マクロン大統領も原稿を読んでいるかもしれないが、こうしたスピーチ力は高く、プレゼンとしては、これまでの他の演説のように得意なのだろう。

演説の最初に、これはこの100年で最大の危機と位置づけ、この最大の危機を共に乗り越えようと語った。

内容にしても、日本から遅れることちょうど2週間、学校の閉鎖を決定というのがまずは目玉の方針だった。ただし、日本とは違い、幼稚園・保育園から、大学までの全ての学校が対象で、なおかつ、期限は設定せずという徹底ぶり。日本の(悪い)例が先にあったからかもしれないが、日本がなぜ幼稚園/保育園は含まないで、期限付き、しかもかたちとしては「要請」という、言葉だけは「命令」ではないが、実際は「御上からのお達し」であるのに対し、フランスは全ての学校が期限無しの強制的な休校だ。

さらに、日本と大きく異なる方針だけを見ると、原則、公共交通機関を使った不要不急の移動は避けるようにとし、特に70歳以上の高齢者や基礎疾患・呼吸器系の疾患がある人、障害がある人は外出を避けるようにとした。さらに経済対策として、会社には、3月の税金の支払(社会保険料など)は延期することができ、部分的な失業も認め、手続きは専用のインターネットサイトから出来るようにするなど、対策は早い(ように見える)。さらに、予算は設定せず、「quoi qu’il coûte:どんなに高くついても」、全力で対応すると強い言葉で語った。
学校について、フランスは9月からが新年度なので、いまは年度末から3ヵ月前で、年度末にかかった日本とは違い、学習プログラムの問題が発生しているが、これについては、フランスで従来からある通信教育システムCNED(クネッド:Centre national d’enseignement à distance(国立遠隔教育センター))があり、これを有効活用し、特別プログラムをインターネットで提供、また各学校でもオンライン授業を推奨するなど、一応準備は整えたという。もちろん、日本と同様、あるいはそれ以上に家に子どもがいることで、働きに出られなくなる親にも仕事にいけなくても補償があるという。

大統領制のフランスでは首相と大統領がいて、役割も立場も違い、首相だけがいる日本や、大統領だけのアメリカと単純に比べることはできないが、国の政治のトップが同じ世界規模のパンデミックに対しての国内政策への姿勢がそれぞれ違う。問題が大きく、世界共通だけに、この違いがよく見える。

またフランス大統領は、この週末と来週にかけて行われる市町村議会議員選挙は、延期されるのではという憶測も飛び交っていたが、予定通り行われることも明言した。

そして時折強い言葉で、毅然とした態度を見せ、わかりやすい言葉、柔らかい口調もまぜ、各国民の「責任感」や「連帯感」に訴えかけ、かなり説得力はあったようだ。この演説では、「非常事態宣言」という言葉も「ステージ3」という言葉も使わなかったが、明らかに思い切った対策ばかりで、具体的な予算枠の数字がないとか、休校の期限が不透明などという点などはあるが、かなりの「やっている感」はでており、大きな批判もさすがにいまのところは見られない。

あえて言えば、選挙の決行は、この状況は与党に有利であるとか、他の政治日程がらみの戦略という見方もあったり、昨年の「ジレ・ジョーヌ」の運動が年金制度改革問題で尻すぼみになり、さらに年金制度改革問題も、今回のCOVID-19で結果的に下火になり、政府としては好都合、いいタイミングのように見えることだろうか。