第六共和制?

投稿日時 : 2024/07/08 17:30

昨晩のフランス民放TF1の選挙特番の生放送。22時近く。左下にあるのが予想議席:赤・左派連合、黄・大統領勢力、青・右派、紫・極右。各テレビ局では、政治家たちが夜中まで、この後について議論していた。

昨晩の総選挙の結果は、誰も予想していなかったものになった。20時の速報からほぼ傾向は判明しており、第一回の投票後では、確実、あるいはほぼ確実かもともされていた極右政党RNの絶対的過半数からはほど遠く、RN党は議会勢力でも第三党となった。

「反RN」の大きなムーブメントが勝ったということだが、その内容については様々な見解や分析がある。そして、「漁夫の利」を得たのが、大統領勢力で、当初は「泥船」状態で、大統領を見限って、その先を見据えて距離をとったり、あからさまに大統領の決断を批判するような政治家もいたが、結果、そこまでの大敗ではなく、議会勢力では第二党になった。

そして、左派連合は、もちろん絶対的過半数にはならなかったものの、数字では、国会の多数派「政党」となり、開票速報直後から、勝利宣言があった。

これで、当初言われていたように、「最悪の事態」や「地獄」は避けられた形にはなったが、「カオス状態」、「制御不能」とされている。

現首相で、大統領勢力を率いたアタル氏は、慣例にのっとり、本日、大統領に自らの辞任を申し出るが、大統領がどう判断するかはまた別問題。大統領は選挙結果が確定してから、あるいは国会の議長が選ばれてから(18日)、あるいは国会が始まるタイミング(22日)で、首相を選ぶなど、何らかの行動を起こすとされている。

左派連合では早速、「連立政権」にむけての動きが進んでいるが、これまでは右と左の二大勢力の攻防で、「過半数」がポイントになっていたフランスの議会政治だが、どこも過半数がいないばかりか、ほぼ三つ巴状態で、どこも単独で主導権は握れないし、法案を拒否するにしても他の勢力の協力がいるという、へたをすれば何の法案も予算案も通過しないという状態になりかねない。

ただし、法案ごとに党派をこえて議論をし、妥協と最大公約数で法案を変えていくというのは、ほかのヨーロッパ諸国、そしてヨーロッパ議会では通常のことで、フランスでも史上初めて、この、ある意味で健全な議会政治が始まるという見解もある。実際、左派連合の中、あるいはほかの党でも、フランスのために、国民のために、党派をこえて協力しようという議員がいる。

様々な人種や出自、考え方や意見があるフランス国民、その多様性がようやく国会に反映されたともいえる。ここから、国会で、いっしょにフランスをよくしようとする動きになるのか、「団結・連帯」ができるのか。左派連合が提案していた主な政策では、現政権が進めていた新年金制度の廃止や最低賃金を現行の1400ユーロ近くから1600ユーロというものがあったり、富裕層からの増税などがあったが、どの政策がどこまで実現されるのか。

そして、このまま議会勢力が確定すれば、選挙前に懸念されていた、極左と極右が手を組むことで絶対的過半数となり、あらゆる政府の提案を拒否するという可能性もなくなり、本当に議会政治がうまく機能すれば、多様な意見・党派から全ての人が何らかの形で納得する法案などがきまる可能性はあるという。

ちなみに、政府は自身で解散したり、首相も辞任したり解任されたりはするが、国会は憲法上来年の6月9日までは解散できないことになっている。