文化に声を

投稿日時 : 2021/01/06 18:00

「“芸術とは、多くの人に生きる力をあたえるものです”」
1月6日付けLe Monde紙の紙面より。

日本が緊急事態宣言の「検討」を始めたニュースはフランスでも取り上げられているが、フランスでのメディアでの取り上げ方(在日記者や、在仏日本専門ジャーナリストの見方)では、日本が決定でも実行でもなく、「検討している(envisager)」というところを強調しているように見える。

フランスでも年末の感染状況が今週から数字に反映されはじめているが、それほど良くも悪くもなく、日本ほどの危機的な上昇ではないが、安心できるものではなく、飲食業の休業はさらに延長されるとされている。そんななか大きくとりあげられているがワクチン接種で、一年前のマスク、その後の陽性検査に続き、Covid-19に関する政府の対応の三つ目の問題点としてワクチン接種が焦点になっている。

日本では国や地方自治体も場当たり的だったり後手に回る対応だが、メディアもそれに呼応するように即時的な話題ばかりが大きくとりあげられているように見える。感染状況がより厳しいフランスではあるが、それでもイランの問題やアフリカ大陸の問題、ヨーロッパやアメリカの状況も取り上げられている。国内に関しても、直接的な感染症関連の話題のほかにも、環境問題や、教育関連、そして文化界の動向も定期的に取り上げられている。

日本のメディアと比べて特に目につくのが、環境と文化の記事だろう。そもそもこの「コロナ禍」でなくとも、この二つの分野は、日本とフランスではメディアだけではなく、国民個人でも重要度が違う。文化に関して言えば、「文化人」そのものの意識も社会的ステータスも違う。

Le Monde紙が文化面の1ページで取り上げたのが、フランスを代表する女性映画監督、クレール・ドゥニの独占インタビューだ。カメルーンで育ち、アメリカで暮らすなど、世界を廻っており、ヴィム・ヴェンダースやジャック・リヴェットのもとで働いた後、すでに10作以上の長編映画をとっている。昨年、Covid-19が拡がったときもアメリカで撮影中、その後もパリの自宅で仕事を続けているという。現在は4月末に予定されているアメリカのオスカー賞の選考をしており、夏に延期されるであろうカンヌ映画祭にはあまり期待はしていないが、今年の終わりには、また街にでて撮影ができることをいのっているという。