絶え間ない議論
投稿日時 : 2019/10/18 18:30
ことの始まりは10月11日、とある地方議会に子どもたちをつれて見学にきていた女性がヴェール(la voile)をつけていた。これを見つけて激しく抗議したのが極右政党の議員で、早速ツイッターに投稿。たちまち炎上状態に。この議員は、フランス共和国のライシテ(政教分離の国家原則)の名の下に、ヴェールを脱ぐように求めるように議長に進言したが、聞き入れられず、自分のスマホで撮った動画を拡散し、各メディアが取り上げた。
こうしたイスラム教徒の着衣に関する問題は、定期的といってよいほどフランスでは問題(話題)にされている。それから一週間あまり。Libération紙のサイトでは、読者からの疑問に答える形で、「チェックニュース」を行った。それによると、ニュース専門チャンネル(LCI, BFMTV, France Info, CNews)では85回も企画され、取り上げられた回数は286回。同じ専門家が何度も呼ばれているケースももちろんあった。ただし、こうした討論会には、ヴェールを着用した女性は一人も参加しなかった。唯一登場したヴェール着用の女性は、討論番組ではなく、インタビューのみだった。Libération紙は、この4社にヴェール着用の女性を討論に招かなかった理由をたずねたが、返答はなかったという。
当然、他の討論番組と同じく、さらにはそれ以上に、こうした討論は激しくなり、失言も。特に「嫌イスラム」の失言(dérapages islamophobes)が多く、ヴェールをナチスSSの制服と同じだといったものや、ヴェール着用の女性がのっていたらバスや電車から降りるという人など。またとある討論での発言では、例えば小学校の男の子が課外授業で外に行くときなどに女の子と手をつなぐことを拒否した場合、彼の名前がモハメッドで、彼女の名前がジュリーだったら問題になるのか、という発言・問題提起もあった。メディアですらこの盛り上がりなので、SNSなどではさらに激しい。
ただ、日常的には、フランスでイスラム教徒は多く(厳密には、宗教的信条が多様である)、街を歩いていても、地下鉄に乗っても、スーパーにいってもその着衣などでわかる。そうした場所で、例えば、ヴェールを着用した女性がカフェやスポーツジムなどへの入店を断られたり、バイトの面談などを受けられなかったり、名前だけで物件の下見にも行けなかったりと、日常ではよくある光景ではある。フランス語をしゃべれない日本人が高級レストランやブティックの店先で、早口にフランス語でしゃべられて入れてもらえないことがあるのも、大きくいえば同じことだろう。
それでも、近年問題になっており、一部のメディアなどでもいわれているのが、こうした問題がメディアで大きく・多く取り上げられ、なおかつ、ヘイトスピーチ的な言説が普通にメディアで流れていることだ。これはフランスに限らず、アメリカでも、日本でも、世界でも同じだろうが、アメリカであればメキシコや南米からの移民、日本であれば韓国や中国であるところが、フランスではどうしても「イスラム教」になってしまうようだ。
絶え間ない議論
投稿日時 : 2019/10/18 18:30
ことの始まりは10月11日、とある地方議会に子どもたちをつれて見学にきていた女性がヴェール(la voile)をつけていた。これを見つけて激しく抗議したのが極右政党の議員で、早速ツイッターに投稿。たちまち炎上状態に。この議員は、フランス共和国のライシテ(政教分離の国家原則)の名の下に、ヴェールを脱ぐように求めるように議長に進言したが、聞き入れられず、自分のスマホで撮った動画を拡散し、各メディアが取り上げた。
こうしたイスラム教徒の着衣に関する問題は、定期的といってよいほどフランスでは問題(話題)にされている。それから一週間あまり。Libération紙のサイトでは、読者からの疑問に答える形で、「チェックニュース」を行った。それによると、ニュース専門チャンネル(LCI, BFMTV, France Info, CNews)では85回も企画され、取り上げられた回数は286回。同じ専門家が何度も呼ばれているケースももちろんあった。ただし、こうした討論会には、ヴェールを着用した女性は一人も参加しなかった。唯一登場したヴェール着用の女性は、討論番組ではなく、インタビューのみだった。Libération紙は、この4社にヴェール着用の女性を討論に招かなかった理由をたずねたが、返答はなかったという。
当然、他の討論番組と同じく、さらにはそれ以上に、こうした討論は激しくなり、失言も。特に「嫌イスラム」の失言(dérapages islamophobes)が多く、ヴェールをナチスSSの制服と同じだといったものや、ヴェール着用の女性がのっていたらバスや電車から降りるという人など。またとある討論での発言では、例えば小学校の男の子が課外授業で外に行くときなどに女の子と手をつなぐことを拒否した場合、彼の名前がモハメッドで、彼女の名前がジュリーだったら問題になるのか、という発言・問題提起もあった。メディアですらこの盛り上がりなので、SNSなどではさらに激しい。
ただ、日常的には、フランスでイスラム教徒は多く(厳密には、宗教的信条が多様である)、街を歩いていても、地下鉄に乗っても、スーパーにいってもその着衣などでわかる。そうした場所で、例えば、ヴェールを着用した女性がカフェやスポーツジムなどへの入店を断られたり、バイトの面談などを受けられなかったり、名前だけで物件の下見にも行けなかったりと、日常ではよくある光景ではある。フランス語をしゃべれない日本人が高級レストランやブティックの店先で、早口にフランス語でしゃべられて入れてもらえないことがあるのも、大きくいえば同じことだろう。
それでも、近年問題になっており、一部のメディアなどでもいわれているのが、こうした問題がメディアで大きく・多く取り上げられ、なおかつ、ヘイトスピーチ的な言説が普通にメディアで流れていることだ。これはフランスに限らず、アメリカでも、日本でも、世界でも同じだろうが、アメリカであればメキシコや南米からの移民、日本であれば韓国や中国であるところが、フランスではどうしても「イスラム教」になってしまうようだ。