不平等とメロドラマ

投稿日時 : 2020/07/15 18:30

「7月14日のインタビュー:“怖がっている”国民に対して、エマニュエル・マクロンは、何よりも、“大規模な振興策”と雇用を強調。
経済紙 Les Echosのサイトより。

昨日の1時間近くの大統領のインタビューのあと、フランスのメディアやSNSはもちろんさまざまな意見やコメントで溢れている。

なかでも大きく取り上げられている数字が、まずは8月1日。この日からフランスでは、公共の閉ざされた空間(espace public clos)では、マスクの着用が義務になる。実際にはどのように実施されるかはまだ不明だ。罰則規定はもちろん、誰が何の権限で取り締まるのか、さらには「マスク着用をしなくてもよい」という許可書などもあるのかなど。

もう一つの数字は、「少なくとも1千億ユーロ」規模の予算を経済復興などに用意するとしたことだ。これについても、どこからこの予算をとってくるのかなどの批判や、これでは不十分などの意見もある。これはとくに、来春までに失業者はさらに100万人増えるという試算などを受けたものだという。

日本でもこの春の新卒採用の時期に若者の就職難の話題があったが、フランスではそもそも「新卒」もなく、「就活シーズン」もない。それでも、雇用で真っ先に影響を受けるのは、非正規の採用であったり、若者であることはかわらない。

このインタビューでは、エコロジー問題にはあまり言及がなかったとか、問題とされる内務大臣についてははぐらかしていたとか、新しい内閣についての説明も中途半端など、もちろん批判のポイントは多い。

ただ、日本と比べてもだが、フランスのメディアのなかでもプラスのポイントとして取り上げられていたのが、マクロン大統領が、コンフィヌモン(自宅隔離)の期間は、「不平等」をあらわにしたと言ったことだ。「大きな庭がある家での隔離と、狭いアパートに住む大家族の隔離」はまったく違うと。そしてこの「不平等」を解消することに努めたいと言ったことは評価されている。
もちろん、これも「平等」という言葉が好きなフランス人に向けたコミュニケーション戦略だといってしまえばそれまでだが、フランスの政治家(は特に)とは、そもそも言葉で相手を納得させるように、自分もそれを深く信じている(かのように)ことを表現する。

日本のメディアでも、コロナ禍で、状況が切迫している人びとの話題も取り上げられることがあるが、首相とはいわなくとも、それなりの政治家が「不平等」だと大きな場所で発言することはなく、メディアでの取り上げ方もどちらかというと、「社会的不公平」の暴露ではなく、フランスから見たら、メロドラマ的な取り上げ方のように見えるのではないだろうか。