フランスの“イキコモリ”

投稿日時 : 2020/06/18 17:00

6月16日に国営放送France 5で放映されたドキュメンタリー
「Hikikomori : 自発的な隠遁者?」

デコンフィヌモン(隔離解除)が進むフランスで、昨日放映されたのは、「ヒキコモリ」をテーマにした番組だ。

津波も国際用語として「tsunami」となったように、「ヒキコモリ」も「Hikikomori(フランス語ではHは発音しないので、“イキコモリ”)」として国際用語となり始めている。

この番組は国営放送で毎週、フランスの社会問題などのドキュメンタリーを放映している「Le Monde en face」という番組だ。

もちろん、「イキコモリ」は日本で最初に確認された状態だが、フランスでも社会問題・健康問題となっているが、まだ大きくは取り上げられておらず、その実態を紹介するというような内容だ。

放映時間の1/3は、フランスのヒキコモリの実態を当事者家族、医療施設、ヒキコモリ本人、アソシエーションなどを通じて紹介。1/3は日本での実態、とくに「ヒキコモリ」が「コドクシ」に繋がっている現状まで紹介し、日本のNPO活動も紹介した。残りの1/3は、専門家をスタジオに招き、自身もヒキコモリのフランスのアソシエーションの代表も電話で参加しての討論だった。

フランス側の取材では、現在ヒキコモリ中の本人や家族へのインタビューがあったが、日本側の取材では、本人や家族は出てこず、NPOによってヒキコモリから脱しかけている人達のインタビューだった。番組最後の討論にも電話で参加した、自身もヒキコモリ中の男性は、「Hikikomori France」というアソシエーションを作り、SNSなどで情報発信、情報交換をしており、Facebookのグループには1700人以上の参加者がいるという。フランス人のヒキコモリは、同じ「ヒキコモリ」でもフランス人らしい。

ちなみにフランス語で「ヒキコモリ」は、「reclus sociaux」、または「reclus asociaux」という言葉を使うこともあり、日本語にすると、いま流行の「ソーシャルディスタンス、社会的距離」のように、「社会的隠遁者」、「非社会的隠遁者」となる。日本語はsocialを一辺倒に「社会」と訳す癖があるが、socialは人と人とのつながりを示す意味(日本語では場合によっては「絆」「つながり」のほうがしっくりくる場合がある)だ。なので、フランス語の「reclus」や日本語の「ヒキコモリ」には、「(自主的、自発的な)隠遁者」というニュアンスしかないが、「ソーシャル」(または「アソーシャル:ソーシャルの否定形)」)とつけることで、この「隠遁」が「社会問題」で、「人とのつながり・絆」の欠如にあることを示している。

ドキュメンタリーのタイトルには、疑問形で「自発的な隠遁者?」とあったが、ドキュメンタリーの内容からは、その答えは否で、社会的なものであって、さらには健康の問題でもあると見られた。