2020年夏、サッカーと医療。

投稿日時 : 2020/08/21 18:00

「チャンピオンズリーグ:PSGのサポータには、Covid-19の検査を受けるように要請」
Le Parisien紙のサイトより。写真は決勝進出が決まった火曜夜のシャンゼリゼ。

日本でもコロナ禍の影響で、国内スポーツが中途半端に再開されて盛り上がりにかけるなか、国際サッカーファンの間では、パリのサッカーチーム、PSG(ペーエスジェー)ことパリ・サンジェルマンが欧州チャンピオンズリーグの決勝に進出したことが話題になっている。

フランスのチームがチャンピオンズリーグの決勝に進出するのは実に16年ぶり、もし優勝となれば1993年のマルセイユ以来の二度目、PSGとしては初の優勝となる。もちろん、フランス、特にパリでは大きな盛り上がりで、マスク着用義務などもおかまいなしで、サポーターがバーなどで観戦、決勝進出が決まると街へ繰り出し大騒ぎだった。

マクロン大統領も、決勝戦の観戦に行くという話もあり、パリ市は決勝戦当日、万が一(?)勝った場合を想定して、シャンゼリゼ界隈などを進入禁止にするとしていたり、マルセイユでも決勝が行われる夜は、市の中心部ではPSGのユニフォームの着用を禁止するなど戦々恐々としている。あえて日本で例えると、阪神が何十年ぶりに日本シリーズの優勝がかかった試合をこのコロナ禍でするというくらいだろうか、それで道頓堀付近を大阪市が立ち入り禁止にするかのような状況で、その決勝戦に首相が行くと。

こうした国を挙げての大きな出来事でもそれに異を唱える声もちゃんと出るのがフランス。それも日本でよくある意地悪で悪意に満ちた非生産的なものではない。

フランス語圏ツイッター上でかるくバズっているのが、この神経外科医のツイッター。彼は単なる「意識高い系」ではなく、行動する医師。これまでもジレ・ジョーヌ運動でもメディアに登場したり、このたびのCovid-19でも医療現場の現状をメディアで訴えるなどしている。

Laurent Thines医師のツイッターより。

ツイッターの内容は:(グーグル翻訳もありますが)

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PSGのキーパーの給与:月額614000ユーロ
年間に換算するとこれは:
>医療インターンならば、570年分。
>ASH (agent des services hospitaliers:医療機関従事者。医療行為はせずに、医療機関での清掃や消毒などを担当)は、409年分。
>医療・介護補助(aide soignont)は、361年分。
>看護師:267年分。
>病院医師:106年分。
>開業一般医:89年分。
目がくらむ……。そしてアホらしい。
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もちろん、バズっているということは、反対する意見も含めてで、その反対に対しても返答などと、軽い議論が繰り広げられている。

当然ある反対意見は、サッカー選手の現役の時間は少ないというものだが、それでもこの数字が異常なことにはかわりなく、こうした数字の給与が発生する仕組み(テレビの放映権や、サッカー選手のイメージを利用したコマーシャルなど)が問題で、そうした仕組みの人気のスポーツで国民が盛り上がって、感染症対策をせずにいながら、それをサポートする医療現場はまた別の仕組み(給与だけではなく)でなりたっているという現代社会に問題を投げかけている。

これが特殊な例ではなく、フランスでもCovid-19の感染者が減らず、クラスターの数も減少しないなか、医療現場からはまた悲鳴の声が出てき始めている。最近のフランスの社会運動は、ジレ・ジョーヌ、年金制度改革反対と続いたが、9月からの新年度は医療従事者が中心となるかもしれない。