環境問題は政治問題、そしてメディアの問題。

投稿日時 : 2023/05/23 17:30

「交通、暖房、工業…。フランス政府の温室効果ガス対策」
地方紙Midi Libreのウェブサイトより。

月曜の午後、フランスのエリザベット・ボルヌ首相は、温室効果ガス対策の方針を発表した。2030年までに現在の排出量を半分にするという大胆な目標で、1/2は企業努力、1/4は政府や公的機関、そして残りの1/4が一般家庭だという。

この新しいプランでは、電気自動車や水素自動車、水上交通や自動車の乗り合い(co-voiturage)などの推進、セントラルヒーティングで使われている燃料暖房の廃止の促進などをさらに進め、新規のガス暖房の設置を認めないなど、CO2の排出量の削減を進めるという。

しかし、大きく発表をしたわりには、実際はすでに取り組みが始まっていることが多く、具体的な数字なども発表されたわけではなく、メディアや環境団体などからは、不充分だという批判が出ている。新しいプランの詳細は6月中に発表されるというが、どこまで現実的で国民が納得する方針が出せるかどうか。

ところで、フランスで最近話題になっているのが、「Climato(-)sceptiques」(気候(変動)懐疑論者:クリマトセプティック)。これは気候変動は人間の活動のせいではないと考える人たちで、つまりは、人間のせいではないので、人間が活動を変える必要はないという考え方になる。そもそも環境問題が政治でもメディアでも最重要事項の一つとして取り上げられない日本からみるとあまり理解しがたいが、気候変動問題について、様々な意見があり、その考え方で生活様式や政治的意見も異なるのはフランスだけではなく、アメリカや欧米でもある。

気候変動や温暖化について、人間の活動が大きく影響していると考える人もいれば、人間のせいではないと思う人、さらには気候変動自体を否定する人もいる。最近のフランスで問題になっているのは、気候問題を人間活動のせいでないと考える「クリマトセプティック」は、低所得者層や若者の割合が多くなっており、かつてのポピュリズムとも絡んで、フランスの伝統的な極右系統もそうした層への働きかけもし始めているという。

日本に比べるとテレビや新聞などのメディアが環境問題を取り上げる頻度も分量も多いフランスだが、それでもこうした「気候(変動)懐疑論者」が多いのはメディアの責任もあると、メディア自身も自己分析している。