Chirac for ever

投稿日時 : 2019/10/02 18:30

Le Parisien紙のサイトより。地下鉄の改札を飛び越えるジャック・シラク:この有名な写真の真相」

日本では当然死去のニュースの後は、国葬のニュースも割と簡単に報じられたが、フランスでは、いまだにさまざまな関連ニュースが報じられており、この元大統領の死去の話題の大きさは、フランスが自国の元大統領の死去を報じているという以上に、シラク氏という一人のフランス人政治家のパーソナリティが大きい。

一般のフランス人も、各メディアもこの「人間的」な部分、このブログでいえば、「フランス人的」な部分を評価しているように見える。さまざまな人がさまざまな思い出やエピソードを語り、過去の映像や動画が繰り返し流されている。

その中でも、最も有名な写真が、上記のもの。これは、1980年、RERのA線の新駅、Auberが開業したときに、当時パリ市長だったシラク氏が地下鉄を訪れたときのもの。

これはいかにもシラク氏らしい、反抗的なところ、血気盛んで、ずるもすることもあるといったまったく「人間的」(つまりここでは「フランス人的」)な瞬間が凝縮されている写真として世に広まっていた。

ただ、死去のあと公にされたのは(それ以前もそうだったのかもしれないが、ここへきてメディアで一斉にとりあげられた)、この写真の真相。写真をとったAFPの熟年カメラマンによると、シラク氏は、案内をした担当者から切符をもらっていたし、ちゃんと改札に通した。しかし、地下鉄に乗ったことがなかったシラク氏は、挿入した切符は取らないといけないことを知らず、改札はしまったままだったため、飛び越えた。という。普通のフランス人がよく(ではないが)やっていたように、無銭で飛び越えたわけではなかった。こうした真相が分かっても、この写真が、シラク氏らしい写真であることは変わらない。

そして、以前からも存在していたが、死後、この写真を使ったTシャツを始めとするグッズや、関連本などがちょっとしたバズり状態になっており、さらにメディアもそれを取り上げ、さらに盛り上がるという状態になっている。

とあるサイトで売っているシラクTシャツ。

ただし、上記の地下鉄の改札での写真については、写真家が著作権侵害だと裁判中で、勝手に商用利用することは認められていないという。

日本ではもちろん、世界の他の国でも、これほどまで死去したことで国中があるい意味で「盛り上がる」(悲しみもあるが、それだけではない、これもまたフランス的な盛り上がり方)ような(元)国家元首はいないのではないだろうか。そしてフランスでも、大統領としての功績などはともかく(それは各自の政治信条によって評価は異なるだろう)、フランス人の心に残る、フランス人らしいフランスの大統領であり、シラク氏が慕っていたドゴール将軍と同じく、フランスの歴史、というよりも、時代を象徴する人であると思われる。これは彼の死後のメディアなどでの取り上げられ方、そこで紹介される一般のフランス人たちの言動を見てもそう感じられる。

彼以降、ヨーロッパの統合が進み、インターネットが発達し、グローバリゼーションが進んだ。フランスでももうフランス的な大統領は現れず、ヨーロッパや世界を見据えた大統領が出てくるのだろう。とすると、シラク氏は、最後の「フランス人らしい」フランスの大統領となるのかもしれない。