それでもフランスはソリダリテとユマニズムの国

投稿日時 : 2020/11/18 18:00

「ソリダリテ(連帯):M6の番組“独占調査”で紹介されたホームレス、
イブライムの助けに大きな支援の波」
ラ・デフォンス地区のローカル情報サイトより。

日曜夜に民放テレビ局M6が社会派ドキュメンタリー番組で紹介したのが、パリの「地下」、「底」に暮らすホームレスの生活。Covid-19以前から数ヶ月に及ぶ取材で、パリに4万人いるというホームレスの現実が紹介された。

パリ18区で20年以上路上生活を続けながらも、いつも同じ場所にいて近所の人たちとも交流がある男性、家庭内暴力がきっかけで路上生活が始まった若い女性、パリの南部の郊外の森の中にテントを張って暮らす家族、精神分裂症でありながらも、地下駐車場の一角に暮らす男性。そして、パリの西にあるラ・デフォンス地区(日本で言うと西新宿のような地区)で、以前働いていたビルの地下で暮らすイブライム。

59歳の彼は、以前は結婚しており、子どももいるが、離婚してからは一人で、職を失ってからは、以前働いていたビルの地下の奥深くで生活している。多くのホームレスがアルコールや麻薬にとりつかれるなか、彼は尊厳を守り、仕事も、よくある「闇仕事(travail au noir)」での不法就労は拒否し、あと数年でえられる年金の望みにしている。

パリ18区のある場所にいつもいる男性。

この番組が放映され始めると、テレビ局のSNSには応援のメッセージが相次ぎ、放映中にクラウドファンディングでの支援も開始されたという。さらに、週があけた月曜日、別のテレビ局での生放送の人気番組、「Touche pas à mon poste!(おれの持ち場・職(TVという意味もある)にさわるな)」では、人気の司会者が、イブライムさんを呼び、さらに話を聞いた。そこで、司会者、シリル・アヌナは、「今晩から、1年間、ホテルに住んで下さい」と自費でホテルを提供。さらに、政府の住居担当副大臣に生放送で連絡し、大臣もできる限りのことをすると約束した。

北駅で女性支援団体からマスクやアルコールジェルの支援を受ける女性。

また、この番組内で紹介されていたのが、世界で唯一、フランスの警察にだけある組織、BASPAだ。これは、Brigade d’assistance aux personnes sans abri(ホームレス支援部隊)の略で、まさにホームレスを支援するためだけの警察組織で、パトロールをして、飲み物や毛布を配ったり、問題がないか見回っている。こうした国の組織だけではなく、もちろん民間の支援団体も多く、ホームレスの1/3を占めるとされる女性への支援に特化したものもある。

Covid-19の第二波まっただ中のフランスで、レストランなども1月15日までは営業できないという話がでており、フランス人の精神状態はよくないが、それでもこうした人間的な問題にはしっかりと向き合い、対応しているようにみえる。

あえて日本で例えると、「ザ・ノンフィクション」がオリンピック準備期間、コロナ禍の西新宿のホームレスを半年以上密着取材、その放映の翌日、別の人気テレビ番組で、例えば坂上忍氏が自腹であるホームレスを支援し、生放送である大臣に電話して、大臣が支援を約束するという感じだ。日本では全く考えられないが、フランスでは、こうした流れになることはごく自然だ。

ちなみにこの番組、「Enquete excluseiv – SDF : dans les bas-fonds de Paris」は動画サイトで閲覧できる。