フランスから見る中国

投稿日時 : 2020/02/10 18:00

「コロナウィルスに警鐘を鳴らした、李文亮医師の死に揺れる中国」
(Le Monde紙のサイトより)

世界規模のニュースの場合、日本とフランスの見方の違い、それぞれの国のメディアの視点の違いがよくわかる。

この週末、日本でのコロナウィルス関係のニュースは、毎日新しい感染者が出ているクルーズ船関係、あるいは、不足しているマスク関連の話題が多いが、フランスで大きく取り上げられていて、日本では大きなメディアではほとんど取り上げられていなかった中国の話題が目に付いた。

それぞれの国のニュースが大きく取り上げられるのは当然で、フランスでもシンガポールへの出張のあと、フランスのスキー場にバカンスでやってきたイギリス人の感染が確認されたニュースが大きく取り上げられ、これはもちろん日本では全く報道されていない。

国営TV局France 3のお昼のニュースより。

それと同じくらい、あるいはそれ以上にフランスのメディアが取り上げられたのが、中国人医師の死亡のニュースだ。1月30日から武漢の市場で働いていた人たちがウィルスに感染して入院したと警鐘をならし、この医師自身も感染して2月7日に亡くなった。フランスでは国営TV放送でも取り上げ、この医師が中国当局から圧力をかけられ、警察から「間違った噂」を広めていると容疑をかけられていたこと、さらには、この医師の死後、一般市民が中国のSNS上で「反抗」していることを伝えている。

国営TV局France 2のお昼のニュースより。
「警告書:“下記の行動を警告する:無責任且つ虚偽の情報をインターネットで拡散”」

さらに、Le Monde紙は、国連機関も1月28日に中国を訪問したものの、中国の「透明性」と「迅速さ」に感謝の意を表明するだけで、この医師には言及しなかったと指摘。この医師の発言を最初から聞いていたらウィルスへの対策は3週間早かったとした。


フランス(国も、メディアも、一般市民も)はそもそも、一般的には、中国に対しては、フランスが大切にする基本的人権や個人の自由を守らない国という認識があるので、余計にだが。この医師のような「国の権力に対抗して」、「人びとのために」、「声をあげて、闘う」人の話、そして、そうした人に賛同してさらに声を上げる一般市民という話題は、フランス(のメディア、そしてその読者や視聴者)が好むものだ。


Le Monde紙の記事ではさらに、中国政府は、2月5日から中国のSNSを「特別監視下」に置くと発表したことを伝えてこの記事を締めている。


これはデモやストの文化がある国とない国の違いといっては短絡的だろうか。

追:本日のコロナウィルスの最新ニュースも、日本は相変わらずクルーズ船関連のニュースで新しく感染者が出たというニュースがトップだが、フランスの朝の一番の話題は、世界保健機構の発表をうけ、世界での感染者数が「停滞期」に入ったというものだった。