「美白」は人種差別?

投稿日時 : 2020/06/30 17:30

「美白コスメ:ロレアルは論争の火消しに」
Le Figaro紙のサイトより。

日曜日の地方選挙の話題の陰になっている感があるが、この週末から週明けにかけて、フランスのメディアやSNSで大きく取り上げられているのが、化粧品大手ロレアルが土曜日に発表した「スキンケア商品のすべてで、「blanc / blanchissant, clair / éclaircissant(白、白くする、明るい、明るくする)」などの表現を使わないというもの。

フランスでは、これが問題になり、SNSではハッシュタグ「JarreteLOréal」や「JeboycotteLOréal」で拡散する不買運動となっている。

世界中(とはいえ、日本やアジアはもちろん、アフリカやラテンアメリカも含まれず、いわゆる欧米が中心)で火が付いている「人種差別的」表現への過剰反応が続く中での発表だっただけに、反応は大きい。

欧米とは異なり、人種差別すら身近でもなく、重要さをもって語られない日本から見れば、発端となったアメリカでの白人警官による黒人男性の殺人も、それ以降の一連のアメリカや世界での出来事も、その現代的重要性は見えないかもしれない。

そもそも、アメリカに対しては批判的な目を向けるフランスは、アメリカでの過剰な反応(黒人が登場する映画の配信停止や、黒人のイメージがある商品のパッケージの変更など)を冷めた目で見ていた。フランスでも歴史上の人物像などに奴隷制度に加担したとして器物破損を行った事件もあったが、フランスでは大きな運動としては報じられず、単発的な個人の突飛な行動としてのみ報じられていた。

そんななかで、フランスの大手の化粧品会社のこの発表。フランスでの一般的な反応は、これはやりすぎ、というものだが、これに端を発して議論が巻き起こっている。

そこで使われている新しいフランス語が、「racialisme」。数年前から使われ出し、英語圏でも使われている言葉だ。(もちろん、日本では一部の専門家のみで、フランスのように一般メディアで使われることはない)

RacismeとRacialisme(フランス語では、ラシズムとラシアリズム。英語では、レイシズムとレイシアリズム)。RacisteとRacialiste(ラシストとラシアリスト)。この二つは違う。という人もいれば、そんなに違わないという意見もある。メディアなどでは、大雑把に説明すると、従来の日本語で言う「人種差別(主義者)」がracisme, racisteで、新しいRacialiste, Racialisteとは、今回のロレアルのように、黒人を差別しているわけでも、白人の優位を唱えているわけでもないが、「人種」という考え方を信じた(ているかのような)発言、行動をすることを指す。

つまり、Racialisteにとっては、「美白」は黒人差別と考えてしまう。さらにはきっと、「真っ黒になれる日焼けサロン」も白人差別になるのだろう。フランスの極右政党の党首が、早速にロレアルのこの発表を非難したようにracisteとracialisteは相反する(という考え方もある)。

日本からみれば、こうした人種差別関連の話題はあまり日常生活や社会生活、さらには政治にもあまり密接ではないばかりか、こうした「世界的(欧米的)」な議論に黄色人種が取り上げられることはあまりないことも目に付く。フランスの視点からは、中東のアラブ系、さらにはユダヤ系の問題も入りより複雑になる。

ただ、ロレアルによると、この方針は数ヶ月も前から企画されていたもので、しかも対象となるのは、アジアだという。あくまでもマーケティング戦略の一環で、アジア(特にインドなど)では、もう「美白」というキーワードは消費者にはキャッチーな言葉ではないという説明をしているという。